APERUNZ NOTE

aperunz.labの備忘録。ビデオ撮影のこと、漫画のこと。

【漫画感想】「重版出来!」にみる仕事が好きという熱量

このたび実写ドラマ化も決定した出版業界をユーモラスに描いた漫画「重版出来!(じゅうはんしゅったい)」。最初に謝っておきますがドラマは見てないですm(_ _)m

 

重版出来!(1) (ビッグコミックス)

 2014年「仕事漫画ランキング」1位を獲得し話題になっていましたが、なんとなーく手が伸びずにいた漫画でした。

 

作者:松田奈緒子さんは1969年生まれ。デビューから15年でベテランの域です。家族に出版関係者が多く、そんな作者さんだからこそこの漫画がかけているのかなと思いました。

あらすじ

主人公 黒木華はかつて柔道でオリンピックを目指していたが挫折。その後就活で出版社を受ける際、社長を不審者と間違えその場で投げ飛ばしてしまう。しかしその芯の強さを認められ、晴れて出版社に入ることが決まりました。

 

1話を要約するとこんな感じなんですが、すごくないですか?この書き方だとあまりにもベタベタな仕事漫画ですよね?実は自分も1話を見て「これは…」と思ったんですよ。

でもだからこそ、ここで漫画をおいてしまった人は2話目、3話目を是非見てもらいたいです。そこからのエネルギーが凄い‼‼

出版や漫画に対する愛が溢れていて、そこには実体験や作者が過去好きだったであろう漫画達の影響が色濃く見られます。現代をテーマにしているように見えながら70年代少女漫画のテイストや90年代青年誌のテイストが匂わされていて見識の深さを伺えます。

業界の内情、バブル期の負の遺産や持ち込み制度の功罪、新人作家の明暗など本当に深く業界に関わっている人だからこそ描ける内容だと思います。

恋愛を必要としない仕事マンガ

仕事をテーマにした漫画は過去いろいろあって、「働きマン」とかでもそうなんですけど女性作家が女性を主役に書くとどうしても恋愛や結婚にフォーカスがいきがちです。家庭と仕事の天秤というのはやはり現代女性のクリティカルな問題ですし、それは仕事が好きであればあるほどシリアスだと思います。

でもそれ故に一般的な恋愛漫画に回収されやすく、主題がボケてしまう可能性すらあります。

その点、重版出来は潔く、主役のキャラクタを「小熊」=「愛らしいけど恋愛対象にはならない」というポジションに置き、仕事に没頭させることで、出版という業界の隅々まで清濁併呑で紹介しています。

 

語弊はあるかもしれませんが、テーマが仕事の漫画に恋愛要素がどれだけ必要か?というと、個人的には本当エッセンス程度でいいと思っています。ほーんのり香るぐらい。

 

恋愛要素を削いでまで作者が示したかったもの。それは業界の人の仕事に対する「愛情」だと思います。登場するキャラクタはみんな漫画や出版に対して何らかの想いを抱えており、それがこの漫画の熱量としてあふれてきています。まっすぐ仕事に打ち込むさまはまぶしくもありうらやましくもあります。この仕事マンガがすごい。

 

ボケない主題。出版業界への興味を湧きたてられるいい漫画です。